Aleksandra Czubak: 十数年前までは炭化水素燃料(ガソリン、石油、天然ガス)の代わりに水素を使うなんてまるでエスエフのような話でした。
とはいえ、現在エネルギー源のトランジションでは水素は重要な役割を果たすようになっています。その証拠としては水素ステーションの増加が挙げられます。ポーランドにも、近いうちに初水素ステーションができます(グダンスクとワルシャワ)。
そういう「水素の改革」の時代が来る、水素が燃料として使われるようになると思われましたか。お仕事をすすめる上、どういうお考えだったでしょうか。
Katsuhiko Hirose:
世界はエネルギーをめぐって争ってきました。近年の戦争のほとんどは実はエネルギーの覇権争いでした。
一方でエネルギーを使うことによる課題 大気汚染や水質汚染は大きな問題を起こし通あります。
この両面を解決する手段として水素は大変興味深い というのが出発点です。
ポーランドにとって言えば地産地消のエネルギーである石炭は魅力的ですが大気汚染や地球温暖化の観点からは単位燃焼させる使い方はサステイナブルな活用は難しいと言わざるを得ません。
水素に変換して用いればこの点は変わります。またより持続的な風量や太陽光も同時に使えかつ増やすことができます。
会社の中でストラテジーを考えていく際に現時点から将来を予測する方法と将来七位が必要になるかという方法がありますが。
予測はほとんど外れました、しかしエネルギーのサステイナビリティや社会の持続性等の目標は変わりません(変化の速度が変わるだけです。)
そういう意味ではよいSFはよい参考になるかもしれません。未来はこうなってほしいなという絵が描かれているので。
A.C. 燃料電池を普及させるのに太陽電池の普及方法と同じやりかたが通用するかどうか。最初のうち、新技術が高価で、次第に普及されました。燃料電池に関しても、同じ現象が起きると思われますか。また、普及させるのにどういった問題がありますか。
K.H. 燃料電池と太陽電池はよく似ています。 太陽電池は材料費よりもプロセス日が高かったでまさに大量生産でコストが下がりました。
一方で今話題の電池のコストのほとんどは材料費です。。したがって材料費を安く入手できる中国が席巻しています。
燃料電池は実は材料費よりもプロセスコストが多く、これにより大幅にコストが下がります。
なぜ太陽電池は中国が席巻しているかというと大量の設備投資です、残念ながら各国はこのタイミングを間違えました。
燃料電池は太陽電池のような一国が席巻するという形にはならないと思います。
A.C. 2017年12月、日本の水素ストラテジーが初めて発表されました。それによると、水素は主に交通・搬送に活用されるとのことです。特に市内交通(バス)、重量搬送・長距離搬送(トラック)、次第に海上・航空輸送に使われる計画です。また、宇宙航空研究開発機構(JAXA)も2029年に月に人間が乗り込む用途の水素探査車を準備するとのことです。火星探査車にも検討中だそうです。
現在日本の輸送にどの程度水素技術が導入されていますか。これからの発展の見込みはありますか。活用範囲の拡大はありますか。
K.H.: 日本でも水素の活用はまだ初期の段階で乗用車がやっと数千台、バスがやっと数百台という状況です。ただしこれから普及期に入るので乗用車、バス、トラックが増えていくと思われます。
2017年の時点ではカーボンニュートラルの政策的な目標はずっと先でした、したがって日本にとっては石油を代替するというエネルギーセキュリティが大目標であって地球温暖化対策はその次に来るというものでした。
現在見直し中のエネルギー基本計画がカーボンニュートラルを目指した計画になれば大幅に加速されると思われます。ただ一方で日本の環境から欧州のように内燃会館を締め出す喫緊の緊急性はない(日本の都市はすべて環境基準を満たしている。ロンドンやパリのようなオゾンやPMの問題がない)
A.C. 普及期は日本・EU、いつ頃予想されていますか。
K.H. 予想は当たったためしはないですが 安価で普及できる車が出来ればかなり早く普及します。 25年から30年あたりが節目です。欧州ではトラック、バスが先行する可能性大 乗用車は現時点では不明(欧州メーカににその力がないので)
A.C.日本の水素自動車は世界的に普及されるとは思いますか。
K.H. 欧州メーカー、米国メーカーに今のところ力がないので簡単にはいかない ハイブリッドは結局20年以上かかり世界中の車がハイブリッドかしっつつある。20年から20年で言えばYES 5-10年では?
A.C. 輸送業界での水素技術発展のネックは何だと思われますか。水素インフラを導入するのに日本にとって一番の挑戦は何でしょうか。
K.H. 水素インフラの拡充と設備のコスト(日本の水素ステーションは欧州の2-3倍かかっている(主に規制))したがって水素ステーションを作っても長くもうからない状況が続く
A.C. 例えばどういった規則が支障となっていますか。安全や輸入に関する規則でしょうか。
K.H. 高圧ガスの規制(保安距離や製造の規制(プロセスごとに機関認証が必要、多く作ることが念頭にないシステム)、2年ごとの分解整備等 CAPEX OPEXともに 大幅コスト増 また無人給油等が実質出来ない。
A.C: ヨーロッパより日本の方がインフラコストが高い理由は何でしょうか。
K.H: 上記 製造規制、地域規制もある 保安距離の解釈が地域の担当に任されている(安全側判断) ガソリンスタンド等との併設がうまくできない 土地代が高い
A.C. ポーランドの場合、2050年に計画されているエネルギー源のトランジションの初歩としては、炭素の役割を減らすこととなります。ポーランドは石炭産出がEU第1位、褐炭産出がEU第2位で、カーボンニュートラルを目指すために、水素技術に重点を置こうとしています。ポーランド政府は日本の水素技術の高度プロジェクトに注目しています。去年3月のニュースによるとオーストラリアのLatrobe Valley Pilotプラントでは日本の協力で褐炭で水素を作り始めたそうです。
K.H.:
石炭をある程度使いながら低炭素化を進めるためには水素化が必須です。もちろんCCSと組み合わせです。
ただ中長期的には風力や太陽光をうまく組み合わせていく必要があると思われます。
A.C. そのようなポーランド・日本間の協力は考えられると思われますか。
K.H: 日本は長くこの課題を研究開発してきました。褐炭からの水素の製造やその活用は大きな協力エリアになると思います。
A.C. 日本の経験を生かしてバルト海での「floating wind farms」という風力発電所の建築・発展・水素生産に使えると思われますか。
K.H.
バルト海は浅いので着床式で結構進められると思います、まずは浮体式よりもその拡充になると思います、ただし技術の開発の協力は十分できると思います。
A.C. 日本での海上風力発電所は今どいう状況でしょうか。やはり浮体式のほうが普及しているのでしょうか。そのやり方でグリーン水素が作られているのでしょうか。
K.H. 日本は遠浅の海が少ない(沖合は深いので海底設置式が出来ない) 漁業権が大変強い(合意を得るまで5年10年かかり高額になる)
浮体式は大変効果 潮流も強く 高コスト になりやすい CNに向けて 検討が始まったところ
A.C. どの分野で日本の技術がヨーロッパ、特にポーランドで活躍できる、または協力できると思われますか。
K.H.
石油やガスが自国で取れない国としてどのようにエネルギーを自給、かつ低炭素化するという点では両国は同じ課題に面しています。日本はかなり長い間この課題に取り組んできたので
いろいろなノウハウ技術があります。両国の協力のポテンシャルは大きいと思います。